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認知症が急激に悪化する原因と予防方法(進行を遅らせる対策)

認知症でよくみられる行動「全般」について、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。

認知症が急激に悪化する場合は、脳炎や脳卒中などの病気などが原因になっていることがあります。また、心不全や腎不全など、脳以外の病気が原因になる場合もあります。そこで、激しい頭痛、手足の麻痺、歩行障害、顔つきの変化などの兆候があらわれたら早めに医療期間を訪ねましょう。
また、予防に向けては生活習慣の見直しをはじめ、認知症の症状の悪化を招く「BPSD」の発症を抑えることも必要になります。

<もくじ>
●認知症が急激に悪化する原因
●対人関係や生活環境が原因で認知症が悪化することがある
●中核症状と周辺症状(BPSD)
●認知症の症状を悪化させないための対応(進行を遅らせる)
●四大認知症とは(原因と治療方針)
●とにかく早めの相談が大切
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●外部からの刺激は認知症の予防や改善に効果的
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

認知症が急激に悪化する原因

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などでは、症状が急激に悪化するケースは稀です。しかし、他の病気が絡むと状況は一気に変わることがあります。

急激に認知症が悪化するケースでは、しばしば他の健康問題が関係しています。
例えば、細菌やウイルスによる脳炎や髄膜症、脳卒中による脳梗塞や脳出血(くも膜下出血)などです。これらは脳に直接ダメージを与えるため、認知機能の低下を引き起こす場合があります。また、心不全や腎不全といった疾患が脳の機能に影響を及ぼし、認知症の症状を急激に進行させることもあります。

突然の激しい頭痛、手足が動かない、顔の片側が下がる(顔つきが変わる)、ろれつが回らない、まっすぐ歩けないなどの歩行障害は、これらの健康上の問題が原因になってあらわれていることも考えられるので、そのような場合は、早急に医療機関を訪ねましょう。

対人関係や生活環境が原因で認知症が悪化することがある

認知症の方に共通してあらわれる代表的な症状を「中核症状」といいます。
新しいことを覚える能力が低下する、場所や人物を記憶できなくなるなど、認知能力の低下が主な特徴です。

しかし、対人関係や生活環境でストレスが増加すると、行動・心理症状ともいわれる「周辺症状(BPSD)」を発症することがあります。BPSDは、抑うつ、妄想、徘徊、暴言など、認知症の中核症状とは異なり、より激しい症状が特徴です。BPSDが発症すると、周囲の人が驚くような言動や行動をとるため、認知症が急激に悪化したように感じます。

中核症状と周辺症状(BPSD)

認知症の症状は、大きく中核症状と周辺症状の2つに分けられます。認知症介護では、それぞれでの特徴を深く理解した対応が求められます。

中核症状とは(認知症の基本的な症状)

認知症の中核症状は、脳の細胞が死ぬことや働きが低下することによって起こります。中核症状は、認知症の進行とともにほぼ全員にみられる代表的な症状で、主に「記憶障害」「見当識障害」「実行機能障害」の3つがあります。

(1)記憶障害
記憶障害は認知症の早期段階で最も顕著にあらわれる症状のひとつです。これにより、新しい情報を記憶することが難しくなり、日常生活で体験した出来事や新しく覚えた知識を持ち続けることができなくなります。
このため、認知症の方はしばしば同じ質問をくり返したり、重要な約束や日程を忘れがちになります。

(2)見当識障害
見当識障害は、時間や場所、人物に関する情報を整理し、それに基づいて適切な判断を下す能力(見当識)が低下する障害です。日付や時刻、自分がどこにいるのか、または目の前にいる人が誰なのかが分からなくなることがあります。

(3)実行機能障害
実行機能障害は、計画立てて物事を順序良くこなすなどの以前は自然にできていた日常の行動が困難になる障害です。例えば、掃除や料理の準備などです。この障害は認知症の方に強いストレスを与え、更なる症状の悪化を招くことがあります。

周辺症状とは(BPSD)とは

周辺症状(BPSD)は中核症状の段階で受ける強いストレス(不安や焦り)などが原因で発症する二次的な症状です。

周辺症状は「行動・心理症状」ともいわれ、英語で表記した「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字をとってBPSDと呼ばれます。中核症状は、認知症になるとほぼあらわれる症状で、時間や場所、人物の把握や認識が難しくなる、新しいことが覚えられなくなるなどが代表的です。

しかし、BPSDは認知症になった人が必ず発症するわけではなく、環境や人間関係などで発生する不安や焦りなどのストレスが要因で発症するケースが多いです。BPSDが発症すると、抑うつや妄想、幻覚などの精神的な症状や、徘徊、暴言・暴力などがあらわれます。

BPSDは根治できないため、日頃からBPSDを発症させない、または発症しても症状を軽くすることを目的にした対応が重要です。これには、本人の感じるストレスを軽減する、安心して過ごせる環境を提供する、そして症状への理解と適切な介護が求められます。

認知症の症状を悪化させないための対応(進行を遅らせる)

認知症の症状を悪化させないためには、まずBPSDを発症させないような日常生活の対応や環境づくりが大切です。認知症の方は中核症状があらわれることで、日常生活で様々なストレスを抱えます。例えば、以前は簡単にできた日常的な行動や、新しい情報を覚えることが難しくなります。

さらに、このストレス状態に「周囲の心無い態度」が加わると、不安や焦りが増し、一層強いストレスを感じた結果BPSDを発症することがあります。このようにBPSDは、主に本人を取り巻く環境や人間関係が要因で発症することが多いため、家族や介護者は、認知症やBPSDへの深い理解とともに、本人の気持ちに寄り添った対応をとることが非常に重要です。
認知症の方が何度も同じことを聞いてきたときに、「さっきも言いましたよ」といった本人にストレスを与えるような対応ではなく、はじめて聞くような態度で丁寧に答えるなど、
「安心感」を感じてもらえるように心がけることが大切です。この安心感が、ストレスの軽減につながり、BPSDの発症リスクを下げます。

そこで、次から具体的な対応を紹介していきます。

認知症の人の気持ちを理解して「信頼関係」を築くことを心がける

認知症の症状のほとんどは、認知症の方の立場に立ってみれば十分理解することが可能です。認知症の方の訴えに耳を傾け、その気持ちに寄り添った対応をとることで、ストレスを取り除き安心感を与えることができます。そこで、時間に余裕があるときには、認知症の方が歩んできた人生や経験に耳を傾け、相手の理解に努めるようにしましょう。

このような対応は、認知症の方が抱える問題や症状が発生したときに、その訴えを理解する手がかりとなります。常に、良好な信頼関係を築くよう心がけましょう。

認知症の人の「できること」「やりたいこと」を適切にサポートする

認知症が進むと自分ではできないことが増えることから、周囲が過剰に干渉することがあります。しかし、認知症の方にも「できること」、そして「やりたいこと」があり、これを阻むと強いストレスを抱きBPSDを招く原因になってしまいます。

このような場合、安易に「それは、私がやります」といったような言葉をかけるのではなく、本人が意欲を持っていることなら、手を出さず見守るようにします。逆に「お手伝いが必要なときはいってください」「上手にできましたね」といった肯定的な言葉をかけ、本人の自尊心を高めることが大切です。

このような存在価値を確認し、自己肯定感を高める行動に対して「まだ終わらないんですか?」など、意欲を失うような言葉は絶対にかけてはいけません。

認知症の方が自分の力でできることを行い、その過程で達成感や喜びを感じることができれば、それは「生活の質(QOL/Quality of life)」を大きく向上させることにつながります。そのためにも、家族などの介護者は、認知症の方のできることや、やりたいことを適切に理解し、支援することが大切なのです。

認知症の人の「自尊心」を傷つけてはいけない

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなり、不安や焦りを抱えるようになります。そのようなとき、否定するような言葉や強制するような言葉をかけると、本人の自尊心を深く傷つけてしまいます。
このような対応が、BPSDの発症を招き、症状を悪化させる原因になることから言葉や態度には十分気をつけなければなりません。

また、聞いた内容は忘れても自尊心を深く傷つけられると、そのときに受けた嫌な感情だけは残ってしまうことがあります。この感情は、良好な関係を築く上での阻害要因になるため十分に注意が必要です。

安心できる場所を用意する

認知症の方にとって、リラックスして過ごせる場所があることは、ストレスの軽減に効果的です。安心できる場所があることで、日々の不安が和らぎ、より安定した生活を送ることができます。

本人が自然にいられる居場所として、窓辺のソファ、リビングのテーブルセット、または自分の部屋などがあげられます。重要なのは、これらの場所が認知症の方にとって「自分の居場所」として認識されることです。そのためには、普段から本人がどこでくつろぐかを観察し、その好みを尊重することが大切です。
そこで、認知症の方がいる場所は、本人が好きな絵を飾ったり、花を生けたり、好きな音楽を流すなど、本人の個性や趣味、文化を尊重してつくりあげるようにしましょう。

また、認知症の程度に応じて、何か役割をお願いすることも居場所づくりには大切です。本人にとっては、そこにいることの理由が明確になるため不安が減ります。
家族のために趣味の裁縫をしてもらうなど様々な方法がありますが、本人の意思にそぐわないことはさせてはいけません。かえって不安になることがあるためです。
また、いかなる時も「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることの重要性を忘れてはいけません。

「生活習慣」を見直す

寝る時間、起きる時間、食事をする時間など、規則正しい生活を送ることは、時間の見当識障害に良い影響を与えます。このような一定のリズムを持った生活は、認知症の方の体内時計を整えるため、日々の生活における不安や混乱を軽減します。

また、適度な運動は、適度な疲労感をともない、ぐっすり眠ることができることから徘徊の軽減にもつながります。運動には散歩や軽い体操など、本人の健康状態や好みに合わせたものを選びましょう。

あわせて、塩分の調整をはじめとする食事の栄養バランスにも注意し病気を予防しましょう。全体的な健康を向上させることは、認知症の進行を遅らせるために必要です。

四大認知症とは(原因と治療方針)

「四大認知症」とは、「アルツハイマー型認知症」、「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」の治らない認知症のことをいいます。適切な対応をとるためには、最低限この4つの認知症を理解することが大切です。
そこで、以下では、これらの認知症の特徴と治療方針を紹介します。

アルツハイマー型認知症

認知症の6割以上がアルツハイマー型認知症です。
このタイプの認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積して神経細胞に損傷を与えることが原因といわれています。

この蓄積により、特に「記憶力」や「判断力」などの認知機能に障害が発生します。現在のところ、アルツハイマー型認知症を完全に治すことはできませんが、投薬により進行を遅らせることは可能です。

しかし、投薬だけではなく、認知症を理解し、正しい接し方を心がけることも非常に重要です。これにより進行を遅らせたり、症状を緩和することが期待できます。

血管性認知症

認知症の原因第2位が血管性認知症です。
脳の血管が詰まったり、破れるなどすると脳へ十分な血液を送ることができなくなる場合があります。この状態が長く続くと、脳細胞へ送る酸素や栄養が不足し認知症が発症することがあります。

血管性認知症を完全に治すことはできませんが、投薬によって進行を遅らせることは可能です。また、投薬だけではなく、リハビリテーションをはじめ認知症を深く理解した接し方を心がけることも、進行の遅延や症状の緩和につながります。

レビー小体型認知症

認知症の原因第3位がレビー小体型認知症です。
この認知症は、レビー小体というタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞に損傷を与えることが原因とされています。

レビー小体型認知症では、認知機能が徐々に低下します。また、良い時と悪い時の調子の波があるため、認知症の発見が遅れがちになることがあります。このタイプの認知症は、手足がこわばる「パーキンソン症状」、実際にないものが見える「幻視」、立ちくらみなどの「自律神経症状」などをともなうことが特徴です。

完全に治すことはできませんが、抗パーキンソン病薬により運動症状の改善を図るなど、症状ごとに薬を処方して症状を緩和させます。

前頭側頭型認知症

認知症の原因第4位が前頭側頭型認知症です。
この認知症は、異常なタンパク質が脳の神経細胞に損傷を与えることが原因とされています。

前頭側頭型認知症では、主に「記憶力」や「言語能力」の低下、さらには感情面での症状があらわれることが特徴です。完全に治すことはできませんが、薬物療法によってその進行を遅らせることが可能です。また、投薬だけではなく、認知症を理解し、正しい接し方を心がけることも非常に重要です。

とにかく早めの相談が大切

認知症を疑うような症状に気づいた場合、早めに医療機関や専門機関へ相談することが重要です。例えば、もの忘れがひどくなったり、他のことに気を取られて本来の目的を思い出せないような状況が多くなったら、早めに相談します。

認知症の進行の遅延や症状の緩和には、早期の診断と治療が最も効果的です。この初期段階での対応が、長期的な「生活の質(QOL)」の向上につながります。

また、外科的な処置などにより治る可能性が高い認知症も存在することから、症状に気づいた時点で早めに受診することが大切です。

認知症で困ったらここに連絡(相談先)

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症ではBPSDの症状のあらわれ方が異なるなど、認知症の介護・ケアには専門家による正しい知見、指導が必要です。
そこで、認知症(またはBPSD)を疑うようなことがあれば、すぐに専門機関に相談しましょう。早期の対応により、発症リスクを抑えることや症状の軽減が期待できます。
また、このような対応は、本人や家族全員のストレス軽減や介護の負担軽減にもつながり、全員の「生活の質(QOL)」の向上にもつながります。

<相談機関>
もし認知症(またはBPSD)を疑ったら以下へ相談してください。

(1)まずは、一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や、全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

また、すぐにケアマネジャーに相談できる環境であれば、詳しい症状や不安な点などを伝えて、必要な支援を教えてもらいましょう。

認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション

認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが欠かせません。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。

外部からの刺激は認知症の予防や改善に効果的

認知症の予防や進行を遅らせる、また、認知症を持つ高齢者と家族との間で良好な関係を築くためには、様々な交流を通じて外部からの刺激を受けること、そしてその刺激により物事への興味や関心を持ってもらうことが大切です。

デイサービスなどの施設では、様々な活動やプログラムを通じて、高齢者同士の交流が促され、新たな興味や関心を見つける機会にあふれています。
まだ、利用されていない方は、このような施設の利用も、一度検討してみてください。

まとめ

認知症が急激に悪化することは稀です。ただし、ストレスなどが原因で周辺症状(BPSD)が発症すると症状が急激に悪化したように感じます。そこで、BPSDの発症リスクを抑える対応を普段から心がけることが大切です。

ただし、認知症ケアは一人(家族)だけで抱え込むべきではありません。ケアマネジャー、医療機関、専門機関など、様々なサポートシステムを利用することが大切です。

認知症の方だけではなく、介護する家族のストレスを軽減し、自己嫌悪に陥らないためにも、デイサービスやショートステイなどの施設を利用し、一時的に「離れる介護」を検討しましょう。これらの施設には、認知症ケア指導管理士や介護福祉士がいるため安心して利用することができます。
認知症介護は一人ではなく、専門家のサポートを得ながら家族全員で取り組むことが大切です。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
新井
アズハイムでホーム長やエリア長等現場経験を経て、現在はホームの入居相談を担当。

<参考文献>
川崎幸クリニック杉山孝博先生著 「認知症の9大法則 50の症状と対応策」
国立長寿医療センター
東京こども医療ガイド「脳炎・髄膜炎(のうえん・ずいまくえん)-解説-」
厚生労働省「認知症を理解する」
厚生労働省「認知症ケア法」