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認知症の方が暴力や暴言に至る理由(原因)と対応・対策を紹介します

認知症でよくみられる行動「全般」について、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。

認知症の方が暴力をふるったり、暴言を吐くことがあります。しかし、認知症だからということで理由もなく暴力や暴言などの攻撃的な行動をとるわけではありません。本人には、行動に至るれっきとした理由があります。しかもその理由は、しっかり傾聴すれば介護者も納得するものが多く、不安や焦りなどによるストレスが暴力の主な原因になっていることが分かります。
そこで、認知症の方の攻撃的な行動(暴力や暴言)を落ち着かせるためには、本人が抱える理由や原因を探り、それを取り除く対応が求められます。

<もくじ>
●認知症の方が暴力をふるったり、暴言を吐く理由
●実際に暴力をふるわれた際の対応
●暴力や暴言が起こりにくくなる普段の対応
●暴力や暴言を起きにくくする生活環境のつくり方
●BPSDに発展するとより強い症状があらわれる
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●外部からの刺激は認知症の予防や改善に効果的
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

認知症の方が暴力をふるったり、暴言を吐く理由

認知症の方が暴力や暴言などの攻撃的な行動をとる場合、その多くは認知能力の低下によってストレスが溜まった結果です。認知症の方は、いままでできていたことができなくなることへの「焦り」、自分の気持ちが相手に理解されないことへの「憤り」、またこのような状態であらわれる「不安」を抱えがちです。これらの感情(ストレス)が溜まることで、結果的に暴力や暴言にあらわれます。

そこで、認知症の方の攻撃的な行動を落ち着かせるためには、まずは本人が抱える理由や原因を探り、その焦りや憤り、不安などを取り除かなければなりません。
そこで、次からは代表的な理由や原因を紹介します。

不安や焦りが暴力などの理由や原因になっている

認知症の方は記憶障害や見当識障害などの障害を抱えています。
これらの障害は、自分が置かれている状況の理解を難しくします。また、理解できたとしてもすぐに忘れてしまうため、自分に何が起きているのかが分からず不安を抱えてしまうことになります。
これがくり返されることで、不安や焦りが生じてネガティブな感情が高まると暴力や暴言などの攻撃的な行動に発展することがあります。

自尊心を傷つけられたことが暴力などの理由や原因になっている

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなるため、焦りや不安を抱えるようになります。そのようなときに、否定的な言葉や強制するような言葉をかけてしまうと、本人の自尊心を傷つけてしまい、これが原因で暴力や暴言などの攻撃的な行動に発展することがあります。

認知症の方を抑えつけるような対応が暴力などの理由や原因になっている

認知症の方は、しばしば周囲から理解しがたい行動を取ることがありますが、その行動は本人にとっては「理にかなった行動」です。このような事情を理解せずに「間違っている」という否定的な言葉で対応してしまうと、認知症の方はそれを理解できず、結果として強いストレスを抱えてしまいます。このストレスは、暴力や暴言などの攻撃的な行動にあらわれることがあります。

体調不良が暴力などの理由や原因になっている

体調不良は、健常者でさえストレスを感じますが、認知症の方にとってはさらに大きな問題です。認知症の方は、体調が悪いことを上手に伝えることが難しく、自分で判断して医者に行くなど、解決に向けた行動をとることができません。
このため、健常者以上に強いストレスを抱え、それが暴力や暴言などの行動にあらわれることがあります。

服用している薬が暴力などの理由や原因になっている

認知症の程度に応じて、症状を緩和させるために薬を服用することがあります。しかし、これらの薬剤は時に予期しない副作用を引き起こすことがあり、それが暴力や暴言といった問題行動の原因になることがあります。また、複数の薬の飲み合わせが原因で新たな症状が発症することもあります。

このため、暴力や暴言などの症状が出た場合は、医師に相談し、処方されている薬の有効性と安全性を評価してもらいます。

周りの人間の感情や表情が暴力などの理由や原因になっている

認知症の方は、周囲の人々の感情や表情にとても敏感です。例えば、介護をする人が忙しそうにしていたり、困ったようにしていると、認知症の方はその理由が理解できずに不安を抱えてしまうことがあります。また、周りが動揺していたり、慌てたりすることなどでも不安を抱えてしまうことがあります。
結果的に、このような状況が長く続くことで、暴力や暴言などの攻撃的な行動に発展することがあります。
特に、「大声」は不安をあおる原因となるため、普段から注意を払う必要があります。

不快な音などの刺激が暴力などの理由や原因になっている

認知症になると、聴覚や視覚などの五感から得る情報を調整する機能が低下します。通常、人間には周囲の環境から不快な音や過剰な刺激を淘汰する機能が備わっていますが、認知症の方はこの機能が衰えているため、日常的な生活音などが大きなストレスになることがあります。

例えば、急な大きな音、交通の騒音、または他人の大声など、これらが認知症の方が攻撃的な行動に移るトリガーになることがあります。

実際に暴力をふるわれた際の対応

認知症の方からの暴力や暴言に対応する際には、本人の気持ちに寄り添うことが対応の基本になりますが、感情が高ぶっている相手をすぐに落ち着かせるのは簡単なことではありません。このような状況は精神的にも身体的にも介護者に大きな負担をかけ、ときにはケガをしてしまうこともあります。

そこで、落ち着かせるのが難しいときは、その場で対応するのではなく、一旦本人と距離を置く「離れる介護」を検討してください。
ただし、激しい暴力に対しては、やむを得なく警察にお願することがあることも念頭に入れておきましょう。

離れる介護.1「物理的な距離をとる(安全を確保する)」

認知症の方からの暴力や暴言がひどい場合、介護者の最優先事項は自身の安全を確保することです。そこで、一時的に部屋(家)を出ていったり、あるいは介護を変われる人がいたら交代してもらうことも大切です。

離れる介護.2「感情面で距離をとる」

一旦安全な距離を確保した後は、介護者自身が感情面で距離をとることが重要です。この作業は介護者が冷静になり、事態を客観的に評価する時間を確保するために必要です。

冷静になったら、認知症の方が暴力に至った理由を考え、「どうやって原因を取り除くか」を検討します。暴力の引き金になった環境的な要因や、その時の具体的な出来事を振り返り改善策を立てます。

また、認知症の方が家族を意図的に傷つけるために暴力をふるっているわけではないということを常に念頭に置き、相手の立場になって考えるように心がけましょう。

その他「地域包括センターや医療機関などに相談する」

症状の悪化が気になったら、ケアマネジャーなどの専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。正しい対応を早期に行うことは、症状の進行を遅らせることや、症状の軽減に効果的で、さらには認知症の人だけではなく家族の「生活の質(QOL~Quality of Life)」の向上にもつながります。

そこで、認知症全般に関する主な相談先を紹介します。

(1)一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

地域包括支援センターでは、高齢者やその支援者に対して、総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などの幅広いサービスを提供しています。地域包括支援センターは、各市区町村に設置され、利用はほとんどの自治体で無料です。自治体のホームページなどで担当するセンターの情報を確認しましょう。

BPSDに発展するとより強い症状があらわれる

認知症の症状は、「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2つに分けられます。BPSDは中核症状の段階で受ける強いストレス(不安や焦り)などが原因で発症する二次的な症状で、多くの場合で暴力や暴言もBPSDに当たります。

周辺症状は「行動・心理症状」ともいわれ、英語で表記した「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字をとってBPSDと呼ばれます。中核症状は、認知症になるとほぼあらわれる症状で、時間や場所、人物の把握や認識が難しくなる、新しいことが覚えられなくなるなどが代表的です。

しかし、BPSDは認知症になった人が必ず発症するわけではなく、環境や人間関係などで発生する不安や焦りなどのストレスが要因で発症するケースが多いです。BPSDが発症すると、抑うつや妄想、幻覚などの精神的な症状や、徘徊、暴言・暴力などがあらわれます。

BPSDは根治できないため、日頃からBPSDを発症させない、または発症しても症状を軽くすることを目的にした対応が重要です。これには、本人の感じるストレスを軽減する、安心して過ごせる環境を提供する、そして症状への理解と適切な介護が求められます。

暴力や暴言が起こりにくくなる普段の対応

日常的な対応では、焦りや不安を抱えることがないように心がけることが重要です。これは、暴力や暴言といった行動に発展するリスクを下げるのに効果的です。ただし、それには、認知症への深い理解と、本人の心に寄り添う姿勢が大切です。
そこで、次からは日常で心がける代表的な対応について紹介します。

認知症の方へは「否定」や「抑えつける」ような態度をとらない

先ほども述べましたが、認知症の方はしばしば周囲から理解しがたい行動を取りますが、それらの行動は、認知症の方にとっては「理にかなった行動」です。これを無視して、「間違っている」などの否定的な言葉で対応してしまうと、認知症の方はそれを理解できず、強いストレスを抱えてしまいます。このストレスが暴力や暴言といった行動へとつながることがあります。

そこで、「強く否定する」「抑えつける」ような態度や言動は控えましょう。
逆に、認知症の方へ言葉をかける際には、「感謝」「肯定」「共感」「誉める」を心がけることで、ポジティブな影響を与えることができます。

認知症の方の認識を無理に正さない

認知症の介護を行う中で、介護者の中には本人の認識を無理に正すような発言をする方もいます。「これはこうしてください!」と強く指示したくなる気持ちも理解できますが、それはしばしば本人にとってストレスの原因となります。

やはり、認知症の方がその行動や言動に至った背景を理解した対応を心がけるべきです。例えば、物を隠すような症状があらわれた場合、「次からはどこかに置かないで、ここに置いてください!」と正すよりも、本人が物を隠す理由を理解した上で、「一緒に探しましょう」とやさしく対応する方が、本人にストレスを与えずに済みます。

自尊心を傷つけるような態度をとらない

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなり、不安や焦りを抱えるようになります。そのようなとき、否定するような言葉や強制するような言葉をかけると、本人の自尊心を深く傷つけてしまいます。
このような対応が、BPSDの発症を招き、症状を悪化させる原因になることから言葉や態度には十分気をつけなければなりません。

また、聞いた内容は忘れても自尊心を深く傷つけられると、そのときに受けた嫌な感情だけは残ってしまうことがあります。この感情は、良好な関係を築く上での阻害要因になるため十分に注意が必要です。

認知症の方の「できること」「やりたいこと」を適切にサポートする

認知症が進むと自分ではできないことが増えるため、周囲が過剰に干渉することがあります。しかし、認知症の方にも「できること」、そして「やりたいこと」があり、これを阻むと強いストレスを抱きBPSDを招く原因になってしまいます。

このような場合、安易に「それは、私がやります」といったような言葉をかけるのではなく、本人が意欲を持っていることなら、手を出さず見守るようにします。逆に「お手伝いが必要なときはいってください」「上手にできましたね」といった肯定的な言葉をかけ、本人の自尊心を高めることが大切です。

このような存在価値を確認し、自己肯定感を高める行動に対して「まだ終わらないんですか?」など、意欲を失うような言葉は絶対にかけてはいけません。

認知症の方が自分の力でできることを行い、その過程で達成感や喜びを感じることができれば、それは「生活の質(QOL/Quality of life)」を大きく向上させることにつながります。そのためにも、家族などの介護者は、認知症の方のできることや、やりたいことを適切に理解し、支援することが大切なのです。

普段からスキンシップをとる

認知症の方は症状により、上手に対話できないことがあります。言葉を通じて意思疎通が難しい場合には、他の形でコミュニケーションをとりましょう。

その際は、笑顔で落ち着かせる、手をやさしく握るなどのスキンシップを通じて不安や焦りを取り除くことをお勧めします。スキンシップは、認知症の方に安心感を与え、穏やかな気持ちにさせることができます。

柔らかい口調を心がける

認知症の方とのコミュニケーションでは、声のトーンが非常に重要です。声を荒げたりすると、認知症の方は不安な気持ちになりやすく、状況が悪化することがあります。
また、柔らかい口調を心がけることは、本人の心理的な安定に効果的です。ストレスを感じさせないためにも、はっきりとした言葉遣いで、同時にやさしさを込めた話し方をすることが大切です。

暴力や暴言を起きにくくする生活環境のつくり方

態度や対応だけでなく、ストレスが少ない生活環境を整えることも暴力や暴言などに発展するリスクを下げるのに効果的です。

落ち着ける場所を用意する(居場所づくり)

認知症の方にとって、リラックスして過ごせる場所があることは、ストレスの軽減に効果的です。安心できる場所があることで、日々の不安が和らぎ、より安定した生活を送ることができます。

本人が自然といられる居場所として、窓辺のソファ、リビングのテーブルセット、または自分の部屋などがあげられます。重要なのは、これらの場所が認知症の方にとって「自分の居場所」として認識されることです。そのためには、普段から本人がどこでくつろぐかを観察し、その好みを尊重することが大切です。

また、認知症の程度に応じて、何か役割をお願いすることも居場所づくりには大切です。本人にとっては、そこにいることの理由が明確になるため不安が減ります。
家族のために趣味の裁縫をしてもらうなど様々な方法がありますが、本人の意思にそぐわないことはさせてはいけません。かえって不安になることがあるためです。
また、いかなる時も「ありがとう」と感謝の言葉を伝えることの重要性を忘れてはいけません。

絵を飾るなど、気持ちを和らげる

認知症の方の日常生活において、気持ちを和らげる工夫は非常に重要です。その一つとして、本人が好きな絵を飾る、花を生ける、好きな音楽を流すなどの方法があります。これらの活動は、心地よい環境を提供し、本人の感情を安定させる効果が期待できます。

ただし、これらの工夫が本人にとって逆効果にならないよう注意が必要です。音量が大きすぎる音楽や、本人が過去にネガティブな感情を連想させる絵は避けるべきです。また、花に関しても、アレルギーや強い香りがストレスにならないように配慮が必要です。

家の中でトイレなどに迷わないようにする

認知症の方が家の中を徘徊する要因の一つに、家の中の特定の場所を忘れてしまうということがあげられます。このような場合、壁やドアに目印や貼り紙をして対応します。
特に、トイレの場所は分かりやすくしておきましょう。これが原因で失禁をしてしまうと、羞恥心などから大きなストレスを抱いてしまうことがあります。

また、このような対策は、トイレだけでなく他の場所にも応用できます。例えば、キッチンや寝室、リビングなどに名前を書いた紙を貼ることで、本人が容易に目的の場所を見つけられるようにします。
さらに、徘徊によるけがのリスクを下げるため、家具や物の配置にも注意しましょう。ぶつかったり、つまずいたりするような家具や物は撤去し、できれば段差も解消しましょう。

認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション

認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが欠かせません。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。

外部からの刺激は認知症の予防や改善に効果的

認知症の予防や進行を遅らせる、また、認知症を持つ高齢者と家族との間で良好な関係を築くためには、様々な交流を通じて外部からの刺激を受けること、そしてその刺激により物事への興味や関心を持ってもらうことが大切です。

デイサービスなどの施設では、様々な活動やプログラムを通じて、高齢者同士の交流が促され、新たな興味や関心を見つける機会にあふれています。
まだ、利用されていない方は、このような施設の利用も、一度検討してみてください。

まとめ

暴力や暴言は、ストレスなどが原因で起こる周辺症状(BPSD)が原因で発症することが多いことから、BPSDの発症リスクを抑える対応を普段から心がけることが大切です。

ただし、認知症ケアは一人(家族)だけで抱え込むべきではありません。ケアマネジャー、医療機関、専門機関など、様々なサポートシステムを利用することが大切です。

認知症の方だけではなく、介護する家族のストレスを軽減し、自己嫌悪に陥らないためにも、デイサービスやショートステイなどの施設を利用し、一時的に「離れる介護」を検討しましょう。これらの施設には、認知症ケア指導管理士や介護福祉士がいるため安心して利用することができます。
認知症介護は一人ではなく、専門家のサポートを得ながら家族全員で取り組むことが大切です。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
新井
アズハイムでホーム長やエリア長等現場経験を経て、現在はホームの入居相談を担当。

<参考文献>
認知症介護情報ネットワーク「興奮・暴力場面における認知症の考え方」
厚生労働省「認知症を理解する」
厚生労働省「認知症ケア法」