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認知症の人の気持ちと介護のポイント

認知症でよくみられる行動「全般」について、特徴・原因・一般的な対策を紹介します。

認知症でもの忘れや、徘徊などを発症していても、認知症の人の感情(気持ち)は普通の人と変わりありません。そこで、認知症の人の気持ちを理解し、寄り添うことが重要な介護のポイントになります。認知症の人の気持ちを理解する、自尊心を尊重する、肯定的なコミュニケーションを心がける、これらの対応が良好な関係を築いていきます。

<もくじ>
●認知症の人にも、普通の人と同様な「感情」がある
●認知症になった人の気持ち
●気持ちを理解して信頼関係を築く
●認知症の人の「できること」「やりたいこと」を適切にサポートする
●認知症の人の自尊心を傷つけてはいけない
●介護する側、される側、双方が「いきいきと生きていく」ために
●認知症の人へ話すときは、感謝や肯定などを心がける
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

認知症の人にも、普通の人と同様な「感情」がある

認知症は「中核症状」といわれる記憶機能や見当識機能などの障害が原因で発症します。また、これらの中核症状がもとになり「BPSD(行動・心理症状)」といわれる周辺症状が発生することがあります。これによって徘徊や暴言、暴力など、さらに周囲を驚かせる行動をとるようになることがあります。

このような行動に対し、「何もわからない」「何もできない」と決めつけ、マニュアル的で無機質な介護を行うと、症状が悪化してしまう場合があります。逆に、認知症の人が周囲から理解しがたい行動をとったとしても、本人にとっては合理的な理由が存在していること、そして普通の人と同じ「感情」を持ち合わせていることを理解して対応すれば、症状の緩和が期待できます。

認知症による変化に不安や戸惑いを抱き、つらい思いをしているのは他ならぬ本人です。そこで、その感情を理解し、寄り添うことが大切になります。

認知症になった人の気持ち

認知症の人は、頻繁にもの忘れをしたり、以前は簡単にできていたことができなくなったり、相手に自分の気持ちを上手に伝えられなくなることがあります。これらの変化は、いままでとは違う自分に不安や焦りを感じさせることがあります。

認知症の人も、普通の人と同様に、いきいきとした生活を送りたいと願っています。生活にハリがあり、自尊心や自己肯定感が高められるような日々を望んでいます。趣味を楽しみたい、人との交流を楽しみたい、家族の役に立ちたいといった様々な思いを持っています。

このような気持への理解や傾聴など、心や感情に寄り添った介護を認知症の人は望んでいます。

気持ちを理解して信頼関係を築く

川崎幸クリニックの院長である杉山孝博先生が執筆した「認知症の9大法則 50の症状と対応策」という本には、認知症の症状を理解するためのポイントが紹介されています。その中に「作用・症状の了解可能性に関する法則」というものがあります。これは、認知症の症状のほとんどが、認知症の人の立場に立ってみれば十分理解できるというものです。

そこで、時間に余裕があるときには、認知症の人が歩んできた人生や経験に耳を傾け、相手の理解に努めましょう。これは、症状が出たときに本人の訴えを理解する手がかりとなります。

介護では、認知症という病気を深く理解すること、相手の訴えに耳を傾けること、そして、本人の気持ちに寄り添った信頼関係を築くことが大切です。

認知症の人の「できること」「やりたいこと」を適切にサポートする

認知症が進むと、自分でできないことが増えるため、周囲が過剰に干渉することがあります。しかし、認知症の人にもできること、そして「やりたいこと」があります。

そのような場合、安易に「それは、私がやります」といったような言葉をかけるのではなく、本人が意欲を持っていることなら、手を出さず見守ることが重要です。逆に「お手伝いが必要なときはいってくださいね」「上手にできましたね」といった言葉をかけ、本人の自尊心を高めることが大切です。

存在価値を確認し、自己肯定感を高める行動に対しては、「まだ終わらないんですか?」など、意欲を失うような言葉は絶対にかけてはいけません。認知症の人が自分の能力内でできること、やりたいことを最大限にサポートし、満足感を高めてもらうことが大切です。

認知症の人の自尊心を傷つけてはいけない

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなり、不安や焦りを抱えるようになります。そのようなとき、否定するような言葉や強制するような言葉をかけると、本人の自尊心を深く傷つけてしまうことがあります。

このような対応はBPSDの発症を招く、または症状を悪化させる原因になる可能性があるため、言葉づかいには十分注意しなければなりません。また、聞いた内容は忘れても自尊心を深く傷つけられると、そのときに受けた嫌な感情だけは残ってしまうことがあります。
この感情は、良好な関係を築く上での阻害要因になるため、普段から使う言葉には十分注意を払いましょう。

介護する側、される側、双方が「いきいきと生きていく」ために

繰り返しになりますが、認知症の人は「何もわからない人」「できない人」ではありません。認知症になっても、本人は生活にハリを求めています。そこで、認知症の人の訴えに耳を傾け、良好な関係を築くことを家族全員で心がけましょう。

そのためには、自分たちと対等なひとりの人間として、本人の気持ちに寄り添った愛情ある対応を心がけます。そして、認知症の人とはコミュニケーションを積極的にとるようにしましょう。ただし、本人のペースや性格に合わせて押しつけにならないよう、「肯定」や「共感」を心がけましょう。

また、介護側も過度にストレスをためないことが大切です。がんばりすぎず、自分の時間を持てるような介護やサポートを積極的に利用することが、介護者自身の精神的な健康を保つためにも重要です。このようなバランスを保ち、介護する側もされる側も、ともに「いきいきと生きていく」ことを目指しましょう。

認知症の人へ話すときは、感謝や肯定などを心がける

認知症の人へ言葉をかけるときは、「感謝」「肯定」「共感」「誉める」を心がけることで良い関係を築きやすくなります。そこで、対話では「そうなんですね」といった肯定や、「その通りですね」「よくわかります」といった共感も使い、本人の肯定感を高めるよう心がけましょう。

また、家族に「必要とされている」という肯定感も認知症の人に安心感を与えます。認知症の程度にもよりますが、家事などを手伝ってもらうことで肯定感を感じてもらうことは効果的です。そのときは「ありがとう」と感謝の気持ちも忘れずに伝えましょう。

認知症で困ったらここに連絡(相談先)

認知症と一言でいっても、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」など、認知症のタイプによってBPSDの症状や対応も異なります。

そこで、行動や言動が気になったり、症状が悪化した際には、ケアマネジャーなどの専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。正しい対応を早期に行うことは、認知症自体の進行を遅らせることや、症状の軽減に効果的で、さらには認知症の人だけではなく家族の「生活の質(QOL~Quality of Life)」の向上にもつながります。

そこで、認知症全般に関する主な相談先を紹介します。

(1)一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

まずは、一般的な医療機関やかかりつけの医療機関を尋ねてみましょう。
また、場合によっては認知症専門外来や「全国もの忘れ外来」を利用します。もの忘れ外来では、もの忘れが自然な老化によるものか、病的なものかを診断し適切な治療を行います。

地域包括支援センターでは、高齢者やその支援者に対して、総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などの幅広いサービスを提供しています。
介護の問題のほか、健康面の悩み、金銭的な問題、虐待など、様々な相談に対応しています。高齢者本人や家族が、どのような小さな心配ごとでも相談できるよう、多様な専門スタッフが配置されています。

地域包括支援センターは、各市区町村に設置され、利用はほとんどの自治体で無料です。自治体のホームページなどで担当するセンターの情報を確認しましょう。

認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション

認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが欠かせません。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。

家族との対話や共有される活動を通じて、認知症の高齢者は新たな視点や情報を得る機会を持ちます。これにより、認知的な刺激が促され、認知症の進行を遅らせる効果を期待することもできます。また、こうした積極的な交流は、高齢者の「生活の質(QOL)」の向上にも効果的です。

さらに、デイサービスなどの外部施設を活用することも、認知症の高齢者の人には様々な刺激を受ける素晴らしいコミュニケーションの機会となります。このように、認知症の予防や改善には、家族の理解とサポート、多様な社会的交流の場が欠かせません。

まとめ

認知症の人の気持ちを理解することは、良好な関係づくりに欠かせません。良好な関係にいることで、認知症の人は安心して生活することができ、症状を軽くする効果も期待できます。さらには、介護負担の軽減にもつながり、認知症の人を含めた家族全員の「生活の質(QOL)」が向上します。

そこで、認知症やBPSDを疑う症状が出たら早めに専門機関を尋ねることをお勧めします。正しい対応を早期にとることは、症状の進行を遅らせることや軽減につながります。また、決して一人(家族)だけで悩むことはありません。ケアマネジャーなどの専門家や医療機関、専門機関を頼り、介護者も適切なサポートを受けましょう。このサポートにより、強いストレスを抱えることなく、自己嫌悪に陥らないことが介護者には大切です。

さらに、普段の介護でストレスを感じている場合、どう対応していいか分からない場合などは、施設を使って一度本人と離れることも考えてみましょう(離れる介護)。デイサービスやショートステイなど、自宅以外の施設を利用する場合は、介護福祉士や認知症ケア指導管理士がいる介護施設を選ぶと安心してお願いできると思います。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
新井
アズハイムでホーム長やエリア長等現場経験を経て、現在はホームの入居相談を担当。

<参考文献>
川崎幸クリニック杉山孝博先生著 「認知症の9大法則 50の症状と対応策」
厚生労働省「認知症の行動と対応について」
厚生労働省「認知症の人と接するときの心がまえ」
厚生労働省「認知症介護研究報告書」