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認知症の方にいってはいけない言葉。避けるべき20のフレーズ

「あなたのせいです!」「まだできないの?」など、否定や抑えつけるような言葉は認知症の方の自尊心を傷つけ症状を悪化させる「いってはいけない言葉」です。逆に、本人の心に寄り添った対話は症状の改善に加え、介護の負担軽減にもつな…

「あなたのせいです!」「まだできないの?」など、否定や抑えつけるような言葉は認知症の方の自尊心を傷つけ症状を悪化させる「いってはいけない言葉」です。逆に、本人の心に寄り添った対話は症状の改善に加え、介護の負担軽減にもつながります。そこで、今回は認知症介護で避けるべき言葉を紹介します。これにより適切なコミュニケーションを図り信頼関係を築いていきましょう。

<もくじ>
認知症の方へは「不安」や「焦り」を感じさせることをいってはいけない
●認知症の方へは「否定」や「抑えつける」ような言葉をいってはいけない
●認知症の方の認識を無理に正すような言葉をいってはいけない
●認知症の方の意欲を失わせるような言葉をいってはいけない
●自尊心を傷つけるような言葉をいってはいけない
●認知症の方に避けるべき20のフレーズ
●認知症の方へ話すときに心がけること
●言葉をかけるときははっきりと柔らかく話す
●認知症で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

認知症の方へは「不安」や「焦り」を感じさせることをいってはいけない

認知症は、中核症状といわれる記憶機能や見当識機能などの障害が原因で発症します。これらの症状は、本人の日常生活に大きな影響を与え、家族や介護者にとっても、対応の仕方が難しいものです。

特に、BPSD(行動・心理症状)は、本人が不安や焦りなどの強いストレスを受けることで発症したり、症状の悪化を招きます。BPSDでは、徘徊や暴言、暴力など、さらに周囲を驚かせる行動をとるようになることがあります。

このため、普段から、認知症の方に不安や焦りを抱かせないようなサポートを心がけることが重要になります。そのためには、認知症という病気を深く理解し、症状を悪化させるような言葉を避けることも大切です。

また、逆にいえば、本人の気持ちに寄り添った言葉は、認知症の方の症状を和らげるなど良い影響をもたらします。

認知症の方へは「否定」や「抑えつける」ような言葉をいってはいけない

認知症の方が起こす行動であっても、合理的な理由が存在している場合はよくあります。例えば、家に帰りたいと訴えたり、家の中や屋外を徘徊するなど、周囲からは理解しがたい行動であっても、「不安」が理由になっていることなどが分かると、自ずと本人の気持ちに寄り添った対応をとることができます。

逆に、行動に至る理由を理解せずに、「間違っている」と否定的な発言をしてしまうと、合理的な理由を持つ認知症の方にとっては、理解が難しくなるため、不安や焦りが増長され、結果的に症状の悪化を招いてしまいます。

介護者は、認知症の方の訴えに耳を傾け、その訴えに応じた対話を心がけることが大切です。特に、対話では共通して「(強く)否定する」「抑えつける」といったような言動を避けることが大切です。これらの言動は、認知症の方の自尊心を傷つけ、信頼関係の構築も難しくします。

認知症の方の認識を無理に正すような言葉をいってはいけない

認知症の方を介護する際、介護者が本人の認識を無理に正すような言動を取ることは避けるべきです。「これはこうしてください!」と強く正したくなる気持ちも分かりますが、やはり本人がその言動や行動に至った背景を理解した対応を心がけるべきです。

例えば、物を隠してしまうような症状があらわれた場合、「次からはどこかに置かないで、ここに置いてください!」と正すよりも、本人が物を隠してしまう理由を理解したうえで「一緒に探しましょう」と優しく対応した方が、本人には強いストレスを与えずに済みます。このように、本人へ不安を与えないような対応は、症状の悪化を緩和させたり、BPSDの発症を防ぐことにもつながります。

また、介護する側もストレスをできるだけ抱えないようにすることも大切です。例えば、物を隠してしまうケースでは、認知症の方が普段から物を隠してしまう場所を観察し、把握しておくことで、介護者も過度のストレスを抱えずに済みます。

認知症の方の行動には一定のパターンがあることが多いため、これらを理解し、対応策を準備しておくことは、予期せぬ状況に迅速かつ適切に対応するためにも有効です。

認知症の方の意欲を失わせるような言葉をいってはいけない

認知症が進むと、自分でできないことが増えるため、周囲が過剰に干渉することがあります。しかし、認知症の方にもできること、そして「やりたいこと」があります。

そのような場合、安易に「それは、私がやります」といったような言葉をかけるのではなく、本人が意欲を持っていることなら、手を出さず見守ることが重要です。逆に「お手伝いが必要なときはいってくださいね」といった言葉をかけ、本人の自尊心を高めることが大切です。

存在価値を確認し、自己肯定感を高める行動に対しては、「まだ終わらないんですか?」など、意欲を失うような言葉は絶対にかけてはいけません。認知症の方が自分の能力内でできること、やりたいことを最大限にサポートし、満足感を高めてもらうことが大切です。

自尊心を傷つけるような言葉をいってはいけない

認知症になると、やりたいことが思うようにできなくなったり、伝えたいことを上手に伝えることが難しくなり、不安や焦りを抱えるようになります。このような状況の中で、否定するような言葉や強制するような言葉をかけると、本人の自尊心を深く傷つけてしまいます。

このような対応は、BPSDの発症を招く、また症状を悪化させる原因になることがあるため、言動には十分に注意する必要があります。また、認知症により聞いた内容は忘れても、自尊心を深く傷つけられたことで、そのときに受けた「嫌な感情」だけは残ってしまうことがあります。これは普段のコミュニケーションの阻害要因になるため、言動にはくれぐれも注意しましょう。

認知症の方に避けるべき20のフレーズ(いってはいけない言葉)

認知症の方への対応において、介護者は、その自尊心を傷つけたり、否定や抑えつけるような言葉を避けることは非常に重要です。

以下に、認知症の方に対して避けるべき20ほどのフレーズをあげています。もし、普段の言動で心当たりがあるようなら使わないよう注意しましょう。

記憶に関する否定的な言葉

記憶の問題は、認知症における中核的な症状のひとつであり、これに対する配慮は本人の心理状態に大きな影響を与えます。以下のような記憶を否定するような言葉は、本人の不安やストレスを増加させ、自尊心を傷つける可能性があるため、「いってはいけない言葉」として使わないように気をつけましょう。

「覚えていないの?」
「もう、いったでしょ!」
「また同じことを…」
「いつも忘れるんだから」
「また忘れたの?」
「何度も何度も…」

時間や過去に関する否定的な言葉

認知症の方は、時間感覚や過去の出来事に関する記憶に苦労することが多いため、以下のような時間や過去を否定するような言葉は、「いってはいけない言葉」として使わないように気をつけましょう。

「それは昔の話」
「ずっと前の話だよ」
「それ、昨日もいったよね?」
「いつまで経っても…」

逆に、「その話、もっと詳しく聞かせてくれる?」といった対応は、本人を尊重する良い対応となり、認知症の方の心の安定につながります。

能力や行動に関する否定的な言葉

認知症によって影響を受けることが多いのが、日常生活のスキルや特定の行動に関する能力です。そこで、以下のような能力や行動を否定するような言葉は、「いってはいけない言葉」として使わないように気をつけましょう。

「間違ってるよ」
「こんなこともできないの?」
「もっとしっかりして!」
「あなたには無理だよ」
「いまさら覚えられないよ」

逆に、「ゆっくりでいいよ」や「一緒にやってみようか?」、「今日はこれができたね」といった反応は、本人を尊重する良い対応となり、認知症の方の心の安定につながります。

怒りや非難を浴びせる言葉

怒りや非難をあらわす言動は、自尊心を深く傷つけます。以下のような怒りや非難を浴びせるような言葉は、「いってはいけない言葉」として使わないように気をつけましょう。

「いい加減にして!」
「違う、違う!」
「そんなことない!」

怒りや非難の代わりに、本人の言葉や行動を理解し、共感を持って接することが大切です。
例えば、本人が何か間違った時は、「一緒に考えようか」と優しく話しかけることや、「それは良いね」と肯定的な対応を心がけることが、本人に安心感を与えます与えます。

年齢などに関する否定的な言葉

以下のような年齢などに関する否定的な言葉は、「いってはいけない言葉」として使わないように気をつけましょう。

「もう若くないんだから」
「もう年だから仕方ないね」

認知症の方へ話すときに心がけること

認知症の方へ言葉をかけるときは、「感謝」「肯定」「共感」「誉める」を心がけることで良い関係を築きやすくなります。そこで、対話では「そうなんですね」といった肯定や、「その通りですね」「よくわかります」といった共感も使い、本人の肯定感を高めるよう心がけましょう。

また、家族に「必要とされている」という肯定感も認知症の方に安心感を与えます。認知症の程度にもよりますが、家事などを手伝ってもらうことで肯定感を感じてもらうことは効果的です。そのときは「ありがとう」と感謝の気持ちも忘れずに伝えましょう。

より良い関係構築のためには、常に優しさと理解を持ち、肯定的なコミュニケーションを心がけます。

言葉をかけるときははっきりと柔らかく話す

認知症の方に言葉をかけるときは、声を荒げず、柔らかい口調で話すことを心がけましょう。声のトーンや話し方によっては、本人が不安な気持ちになり、ストレスを感じることがあります。柔らかく、ゆっくりと、且つはっきりとした話し方は、認知症の方にとって理解しやすく安心感を与えます。

また、後ろから突然声をかけることは認知症の方には大きなストレスになるため、本人の視界に入るようにしてから、穏やかに話しかけることを心がけましょう。

認知症で困ったらここに連絡(相談先)

認知症と一言でいっても、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」など、認知症のタイプによってBPSDの症状や対応も異なります。

そこで、行動や言動が気になったり、症状が悪化した際には、ケアマネジャーなどの専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。正しい対応を早期に行うことは、認知症自体の進行を遅らせることや、症状の軽減に効果的で、さらには認知症の人だけではなく家族の「生活の質(QOL~Quality of Life)」の向上にもつながります。

そこで、認知症全般に関する主な相談先を紹介します。

(1)一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

まずは、一般的な医療機関やかかりつけの医療機関を尋ねてみましょう。
また、場合によっては認知症専門外来や「全国もの忘れ外来」を利用します。もの忘れ外来では、もの忘れが自然な老化によるものか、病的なものかを診断し適切な治療を行います。

地域包括支援センターでは、高齢者やその支援者に対して、総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などの幅広いサービスを提供しています。
介護の問題のほか、健康面の悩み、金銭的な問題、虐待など、様々な相談に対応しています。高齢者本人や家族が、どのような小さな心配ごとでも相談できるよう、多様な専門スタッフが配置されています。

地域包括支援センターは、各市区町村に設置され、利用はほとんどの自治体で無料です。自治体のホームページなどで担当するセンターの情報を確認しましょう。

認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション

認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが欠かせません。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。

家族との対話や共有される活動を通じて、認知症の高齢者は新たな視点や情報を得る機会を持ちます。これにより、認知的な刺激が促され、認知症の進行を遅らせる効果を期待することもできます。また、こうした積極的な交流は、高齢者の「生活の質(QOL)」の向上にも効果的です。

さらに、デイサービスなどの外部施設を活用することも、認知症の高齢者の方には様々な刺激を受ける素晴らしいコミュニケーションの機会となります。このように、認知症の予防や改善には、家族の理解とサポート、多様な社会的交流の場が欠かせません。

まとめ

認知症の介護では、言葉の選び方や対応が非常に重要です。認知症の方へ「不安」や「焦り」などの強いストレスを与えることは、症状の発症や悪化につながる可能性があるからです。

逆に、認知症の方の訴えを理解し、心に寄り添った対話を心がけることで、症状の軽減が期待されます。このような対応は認知症の方だけでなく、介護する側(家族)の「生活の質(QOL)」の向上や、介護の負担軽減につながります。

また、認知症やBPSDを疑う症状が出た場合は、早めに専門機関を尋ね、正しい対応を早期にとることが重要です。一人(家族)だけで悩まず、専門家や医療機関、専門機関のサポートを活用しましょう。介護者が自己嫌悪に陥ることは避けるべきです。

さらに、普段の介護でストレスを感じている場合や適切な対応が分からない場合は、施設を利用して一度本人と離れることも検討しましょう。
デイサービスやショートステイなど、介護福祉士や認知症ケア指導管理士がいる介護施設を選ぶことで、安心してサポートを受けることができます。

介護は一人で抱え込まない。
介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

【監修】
新井
アズハイムでホーム長やエリア長等現場経験を経て、現在はホームの入居相談を担当。

<参考文献>
川崎幸クリニック杉山孝博先生著 「認知症の9大法則 50の症状と対応策」
厚生労働省「認知症の行動と対応について」
厚生労働省「認知症の人と接するときの心がまえ」
厚生労働省「認知症介護研究報告書」