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認知症の方が服を脱いでしまう理由と対応(BPSDとの関係)

認知症でよくみられる行動について、特徴・原因・一般的な対策を症状ごとに紹介します。

認知症の方が突然服を脱ぐのは「BPSD(行動・心理症状)」が原因と考えられ、症状が出た際には本人の訴え(理由など)に耳を傾けながら、自尊心や羞恥心に留意したケアを心がけることが必要です。このような対応が症状の軽減とともに、介護負担の軽減にもつながります。

<もくじ>
●認知症の方が服を脱いでしまう理由(BPSDについて)
●服を脱いでしまう認知症の方への対応は「傾聴」と「観察」が大切
●下着を脱いでしまう認知症の方への対応
●着衣・脱衣に関する様々な症状と具体的な対応策
●認知症による着衣・脱衣の出はじめ(早期発見に向けて)
●突然服を脱いでしまうなどの着衣・脱衣や認知症全般で困ったらここに連絡(相談先)
●認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション
●まとめ

認知症の方が服を脱いでしまう行動は、認知症がもとで発症する周辺症状「BPSD(行動・心理症状)」が原因と考えられます。認知症の進行度にもよりますが、適切に対応することで、症状を軽減させるとともに介護負担を軽減することもできます。

こうした着衣・脱衣に関する行動に対応するためには、まず本人の訴え(気持ち)に耳を傾け、脱いでしまう理由などを理解することからはじめます。ただし、着衣・脱衣に対する対応では、性別を問わず自尊心や羞恥心に配慮する必要があります。

そこで、このコラムでは突然服を脱いでしまうなどの着衣・脱衣の原因や特徴、そして症状の軽減に向けた付き合い方などについて紹介します。自宅での介護だけでなく、施設に入居している高齢者の家族が、施設の介護方針や状況を理解する際にもお役立てください。

介護は一人で抱え込まない。介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

認知症の方が服を脱いでしまう理由(BPSDについて)

認知症になると、中核症状として記憶機能、見当識機能、実行機能、認知機能などに障害があらわれます。これらの障害をもとにして二次的に発症するのが、「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia~行動・心理症状)」と呼ばれる周辺症状です。

BPSDでは、徘徊や暴言、暴力などの行動的な症状や、うつ病や妄想などの心理的な症状があらわれ、時に周囲を驚かせる行動を取ることがあります。

また、BPSDは「身体的要因」「環境的要因」「心理的要因」により症状が発症します。
身体的要因としては、他の健康問題に起因する痛みや違和感、脳機能の問題、薬剤の副反応などがあげられます。環境的要因としは、周囲の不適切な反応、人間関係、生活環境の変化、孤独感などがあげられます。また、心理的要因としては将来への不安、焦り、生活でのストレスなどがあげられます。

ただし、どれが要因で発症したのであっても本人の訴え(理由など)に耳を傾け理解したり、行動を観察したりする「気持ちに寄り添った対応」を取ることに変わりはありません。このような対応は、症状の軽減につながり、認知症の方の「生活の質(QOL)」を高めることにもつながります。また、これによって介護者の負担も軽減されます。

認知症の方が突然服を脱いだりなど、着衣・脱衣に関する行動もBPSDの症状のひとつであることから、基本的な対応は変わりません。
ただし、BPSDの症状が重くなると、ここで紹介している基本的な対処では対応できなくなることがあります。その際は無理をせず、早めに専門家や専門機関へ相談しましょう。

服を脱いでしまう認知症の方への対応には「傾聴」と「観察」が大切

認知症の方が服を脱いでしまう行動への対応で何より重要なのは「傾聴」と「観察」です。
行動を否定するようなアプローチではなく、まずは本人の訴えに耳を傾け、その背後にある理由や感情を理解することが大切です。

例えば、冬場の寒い廊下で突然服を脱いでしまう行為は、我々にとってはおかしな行為にうつります。しかし、本人が暑いと感じて脱いでいるのであれば、それは(本人にとって)理にかなった行為です。このとき、「寒いから着てください」という、行動を否定するかのようなアプローチでは、思ったような効果は期待できません。そこで、まずは相手の気持ちや理由を理解することに努めます。

しかし、本人から明確な答えがもらえない場合もあります。そんな時は、行動を注意深く観察し対応策を見つけ出します。認知症の方は、自分の意思や状態を正確に伝えることが難しいことが多く、観察は非常に重要です。

下着を脱いでしまう認知症の方への対応

認知症の方の中には、服だけではなく下着を脱いでしまう方もいらっしゃいます。
下着を脱ぐ理由は様々です。例えば、下着(または紙パンツ)が触れた感じや締めつけ感が不快で脱いでしまう場合、暑苦しさを感じて脱いでしまう場合、または下着を汚してしまい片づけ方が分からず脱いでしまう場合などです。

介護する側は、傾聴や観察を通じてこれらの理由を明らかにし、適切に対応する必要があります。しかし、本人の自尊心や羞恥心に触れるデリケートな問題であることから十分な注意が必要です。時には観察を通じて理由を知り、本人も気づかないような対応が必要になります。

そこで、次の章では具体的な対応策をご紹介します。

また、このような問題では、身体的な理由が原因になっていることも考えられます。そこで、こうした行動が見られた場合には、泌尿器科の受診も検討しましょう。

着衣・脱衣に関する様々な症状と具体的な対応策

着衣公益財団法人「日本訪問介護財団」が制作した「在宅認知症者のステージごとの生活障害と行動・心理症状に応じたケアガイド」では、着衣・脱衣に関する対応が詳しく紹介されています。このガイドはもともと介護士を対象に制作されたものですが、家庭での介護を行っている家族にとっても大変参考になる内容です。
そこで、一部を抜粋して紹介します。

【引用】
「在宅認知症者のステージごとの生活障害と行動・心理症状に応じたケアガイド」
公益財団法人 日本訪問介護財団
https://www.jvnf.or.jp/katsudo/kenkyu/25kenkyu/25guide.pdf

着衣に関する症状と対応

認知症の方の着衣に関するBPSD(行動・心理症状)の症状と対応を、認知症の進行度別に紹介します。

<軽度の場合>
ケース.1
症状:暑い日でも何枚も服を着る。
対応:「汗をかくと風邪をひいてしまうので、1枚脱ぎましょうか」と声をかける。

ケース.2
症状:衣類の前後がわからない。
対応:入浴時にさりげなく衣類の前後を伝える。

入浴時に限らず、アズハイムでもこのような場面はよくあります。そのようなきは、別の服を見せ着替えていただいています。

ケース.3
症状:ポロシャツの上に肌着を着たり、ズボンの上から紙パンツをはいたりする。
対応:「カッコいい着こなしだけど、こんな風にするともっといいかも」と声をかけ、着替えを介助する。

普段、アズハイムでは気に入っている上着やズボンを見せて着替えを介助しています。

<中等度の場合>
ケース.1
症状:季節感が分からず、夏に秋物の長そでを着て汗をかいている。
対応:「汗を拭きましょう。着替えもお手伝いします」と声をかける。

ケース.2
症状:冬に夏服を、夏に冬服を着る。
対応:鏡の前へ行き「寒くない?」「暑くない?」と聞く。

アズハイムでは、暑いときには別の服を見せるなどして着替えていただいています。
逆に、寒いときには、一時的な対応ではあるものの上からセーターなどを着ていただいています。

<重度の場合>
ケース.1
症状:「汚れていない」と同じ洋服を着続ける。
対応:入浴時に着替えを準備しておき、さりげなく交換する。

ケース.2
症状:服を着ることができない。
対応:着る動作を一つひとつ伝えながら介助する。

脱衣に関する症状と対応

認知症の方の脱衣に関するBPSD(行動・心理症状)の症状と対応を、中等度と重度の場合に分けて紹介します。

<中等度の場合>
ケース.1
症状:紙パンツやズボンをすぐ脱いでしまう。
対応:「〇〇さんはきれい好きだから脱いでくださったんですね、新しいのをはきましょう」と声をかける。

アズハイムでは、このような場合、まずは脱いでしまう理由を聞いています。
例えば、服の素材が嫌い、失禁して気持ち悪いなどが予想されます。

<重度の場合>
ケース.1
症状:最初の一枚を脱ぐことが難しい。
対応:スタッフが1枚余計に着ていき、衣服を脱ぐところを見てもらう。

ケース.2
症状:脱ぐことを嫌がる。
対応:「手を伸ばしてください」「○○を脱ぎます」といった具体的な指示で、一つひとつの行為を伝える。

認知症による着衣・脱衣の出はじめ(早期発見に向けて)

認知症の方におけるBPSD(行動・心理症状)のうち、着衣・脱衣に関連する症状の出はじめには、特定の兆候が見られます。これらの症状を早期に発見し、適切に対応することで、症状の軽減や介護負担の軽減を期待することができます。

<代表的な症状>
(1)衣類に無頓着になる
  認知症が進むと、かつての趣味や興味に対して急速に熱意を失うことがあります。
  特に、その影響は着替え習慣で顕著にあらわれます。
  興味を持っていた衣服やファッションに、関心を失いはじめたら注意が必要です。

(2)着替えをしない
  日常の着替え習慣が失われ、同じ衣服を継続して着用することが多くなります。

(3)服が上手に着れない、または時間がかかる
  認知症の進行により、衣服の着脱に時間がかかるようになったり、
  着方が分からなくなることがあります。
  また、身体的な事情からボタンやファスナーの扱いが難しくなることもあります。

(4)気温(季節感)にあった服が選べない
  認知症による判断力の低下は服選びにも影響します。
  夏場にセーター、冬場に薄着など季節感を考えた服を選ぶことが困難になります。

(5)毎日同じ服を着る
  特定の服にこだわりを示し、毎日同じ服を着続けることがあります。

突然服を脱いでしまうなどの着衣・脱衣や認知症全般で困ったらここに連絡(相談先)

認知症と一言でいっても、「アルツハイマー型認知症」や「レビー小体型認知症」など、認知症のタイプによってBPSDの症状や対応も異なります。

そこで、認知症を疑ったり、症状が悪化した際には、ケアマネジャーなどの専門家や専門機関へ相談し適切な指導を受けましょう。正しい対応を早期に行うことは、認知症自体の進行を遅らせることや、症状の軽減に効果的で、さらには認知症の方だけではなく家族の「生活の質(QOL)」の向上にもつながります。

そこで、認知症全般に関する主な相談先を紹介します。

(1)一般的な医療機関(かかりつけの医療機関)
(2)認知症専門外来や全国もの忘れ外来
(3)地域包括支援センター

まずは、一般的な医療機関やかかりつけの医療機関を尋ねてみましょう。
また、場合によっては認知症専門外来や「全国もの忘れ外来」を利用します。もの忘れ外来では、物忘れが自然な老化によるものか、病的なものかを診断し適切な治療を行います。

地域包括支援センターでは、高齢者やその支援者に対して、総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援などの幅広いサービスを提供しています。
介護の問題、健康面の悩み、金銭的な問題、虐待など、様々な相談に対応しています。高齢者本人や家族が、どのような小さな心配ごとでも相談できるよう、多様な専門スタッフが配置されています。

地域包括支援センターは、各市区町村に設置され、利用はほとんどの自治体で無料です。自治体のホームページなどで担当するセンターの情報を確認しましょう。

認知症の予防や改善に大切なのはコミュニケーション

認知症の予防や進行の遅延、さらには認知症を持つ高齢者と家族との良好な関係づくりには、コミュニケーションが大切です。それには、認知症への家族の深い理解と、高齢者が多様な交流の中で新しい刺激を受け、興味や関心を持つことが大切です。

家族との対話や共有される活動を通じて、認知症の高齢者は新たな視点や情報を得る機会を持ちます。これにより、認知的な刺激が促され、認知症の進行を遅らせる効果を期待することができます。また、こうした積極的な交流は、高齢者の「生活の質(QOL)」の向上にも効果的です。

さらに、デイサービスなどの外部施設を活用することも、認知症の高齢者の方には様々な刺激を受ける素晴らしいコミュニケーションの機会となります。このように、認知症の予防や改善には、家族の理解とサポート、多様な社会的交流の場が欠かせません。

まとめ

このコラムでは、認知症の方の着衣・脱衣に関する行動への理解と、それに対する適切な対応を紹介してきました。認知症の程度は様々ですが、理解して対応することで症状の軽減と認知症の方の「生活の質(QOL)」の向上を期待することができます。同時に、このような対応は介護者の負担軽減にもつながります。

また、着衣・脱衣など認知症の症状を疑ったり、症状が悪化した際には、一人(家族だけ)で悩むのではなく、専門家や専門機関へ相談し適切な指導を求めましょう。
時には、施設を利用して本人と一時的に離れることも必要です。重いストレスを抱えたり、自己嫌悪に陥る前に適切なサポートを求めましょう。

デイサービスやショートステイなどで介護施設を利用する場合には、介護福祉士や認知症ケア指導管理士の資格を持つ職員がいる施設を選ぶと、より安心した認知症ケアが受けられます。

認知症の方がより穏やかに暮らすためには、専門家(機関)、家族、社会が一丸となって支えることが大切ですが、そこには「ともに暮らす(生きる)家族」が幸せになることも不可欠です。そのためには、認知症と上手に付き合っていくことが大切です。

今回のコラムが、認知症の高齢者とご家族が幸せに過ごす一助になれば幸いです。


【監修】
新井
アズハイムでホーム長やエリア長等現場経験を経て、現在はホームの入居相談を担当。


介護は一人で抱え込まない。介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)、デイサービス、ショートステイを提供するアズハイム。
多職種でしっかり対応してまいります。

<参考文献>
厚生労働省「BPSD:認知症の行動・心理症状」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0521-3c_0006.pdf

厚生労働省「厚生労働省の認知症施策等の概要について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000031337.pdf